
クラスに1人はイケメンがいるってのをよく聞く。
でも、私のクラスにはイケメンっていう普通のレベルじゃない、
すっごく、すっごくイケメンな人がいる。
名前は白石蔵ノ介。
クラスどころじゃない。学年…学校の中で一番イケメンだと思う。
そんな彼とは二年間クラスが一緒なのだけれど。あまり話をしたことがない。
「白石くん、これね先生が今日中に提出して欲しいんだって」
「おおきに」
こんな用件しか話さない。
「お前って、白石だけなんかよそよそしいよな」
白石くんにプリントを渡してから、自分の席に戻ると
隣の席になって仲良くなって謙也くんがそう言ってきた。
あ、やっぱり他の人にはそう見えるのだろうか。
「2年間一緒なクラスやったんやろ?流石になぁ…」
「私だって白石くんとさ、楽しく喋りたいよ!」
それはいつも思う。できれば、今の謙也くんとの関係のように
気楽に会話ができる関係になりたい。だけど、白石くんは何ていうか…
オーラがすごくて別の人みたいに思えるんだよね。有名人みたいな!
「いや〜、あいつ意外と普通やで」
「普通じゃないよ」
「お前、喋ったことないからそう思えるだけやで」
ほら、言うやん?人は外見で判断したらアカンて。
謙也くんの言うことはごもっともなことだ。
…頑張って話してみようかな…。
そう思ったときにチャイムが鳴った。
次の時間は家庭科で、手芸だったなあ…。2人ペアで1つのものを作るんだっけ。
私とペアって誰だったけなあ…。
「さん」
「ん?あ、白石くん」
「俺らペアやろ?」
「へ?」
…あれ?そうだっけ?白石くん…だったけなあ。
もっと違う人だった気がするけど…いいや。
このチャンスは二度と訪れないかもしれないし、ここは頑張ってみようかな!
「じゃあ、俺はここ縫えばええん?」
「うん。さっき先生がお手本でやってくれた縫い方ね。私はこっちをやるから任せたよ」
どうしても、白石くんの前では緊張して上手く喋れない。
謙也くんとかの前では普通にふざけたことも言われるんだけどなあ。
そんなことを思いながら、白石くんと会話ができるように話題を考えていたら、
隣で「痛っ!」って声が聞こえた。
見てみると、白石くんが針を指に刺してしまったのか、小さく血が出ていた。
「やっぱ、手芸は苦手やなぁ、あはは」
「わ、笑いごとじゃないよ!大丈夫?」
「こんなん大丈夫やで。そういや、木陰さん。ここの縫い方はこうやるんやな?」
「あ、うん。そう…」
「…痛っ。また、やってもたわぁ」
「…っぷ、あははっ」
思わず、吹き出してしまった。
だって、ねえ?完璧だと思ってた白石くんが手芸で針を二度も指に刺しちゃってるんだよ?
「白石くんて何でも完璧でやりこなすってイメージあったけどやっぱ違うんだよね。
完璧な人なんていないんだよね!あー、おかしい。白石くんのこと良く思いすぎちゃったみたい。
手芸が苦手なんて、男の子だったらあたり前だよねー!」
「なんや、さん俺のことそう思ってたん?」
「うん、ごめんね。オーラが違って有名人みたいで近寄りがたくてさ!」
「あ〜、だから俺だけよそよそしかったん?俺めっちゃ嫌われたかと思ってたんやけど」
「ごめんね〜!でも、話かけようとは頑張ってたつもりなの」
「もうええよ。今こうやって話してくれるんやし」
そう言って笑った彼はかっこよかった。
やっぱり謙也くんの言った通りだ。
"人は外見で判断したらアカン"
彼の意外な一面を見た。もしかしたら、これからもっと増えてくかもしれない。
いつか、完璧な人って思ってたのが馬鹿馬鹿しくなっちゃうくらい
白石くんの不完璧なところをたくさん見つけてくかもしれない。
なんか、楽しみになってきたなあ。
それから、白石くんとはお互い『蔵』と『』って呼ぶくらいに仲良くなった。
そして、お似合いのカップルなんて呼ばれるようになるのはもう少し先の話。
あとで聞いた話なんだけど、本当のペアは蔵じゃなくて謙也くんだったみたい。
だけど、蔵があたしと打ち解けたくて謙也くんにお願いして変わったみたいなの。
無駄がない彼にもきっと苦手なことがあるんだと思う!
でも、手芸とかは苦手でも、料理が上手だったら最高だなあ・・・!
男の子で料理ができるのって素敵じゃありません?笑(10.6.19)
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